九州大学経済学部 経済史I
10月05日 L02 アジア域内貿易と大航海時代
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出席カードの課題
・授業内容や形式に対する疑問・質問点を書きなさい。
・ヨーロッパ商人(ポルトガル・スペイン・VOC)がアジア市場に参入する際,障壁となった事柄は何かを述べなさい。
 (どちらか1つで可)
1.アジア域内貿易と大航海時代

(1)アジア域内貿易
 ・アジア物産:綿織物(インド),香辛料(東南アジア),陶磁器・生糸・茶(中国),銀(日本)
 ・貿易圏:インド洋⇔南シナ海⇔東シナ海,モンスーン
 ・中継貿易港:マラッカ,マニラ,那覇

(2)東方貿易
 ・ヴェネツィア,ピサ,ジェノヴァ,のちフィレンツェ
 ・東→西:香辛料・生糸,西→東:毛織物
 ・関税の重層化

(3)二大宗教勢力の対立と国民国家の形成
 ・オスマン朝トルコの台頭→東ローマ帝国滅亡[1453]
 ・ポルトガル&スペイン:絶対王政の確立
  →インド航路の「発見」へ

2.ヨーロッパのアジア市場参入

(1)ポルトガル
 ・マラッカ占領[1511]→胡椒・香辛料だけの貿易独占
 ・ポルトガル-インド西海岸間:王室の単独事業
  →高コスト,低リターン,財政破綻の危険性
 ・アジア域内:公的・私的な個人貿易
  →投機的,高リターン,アジア商人に依存(鉄砲伝来)

―ハーフタイム―

(2)スペイン
 ・メキシコ銀山の発見→墨銀の流入→「価格革命」
 ・マニラ建設[1571]→メキシコ-フィリピン航路の展開
 ・アントウェルペン:香辛料・毛織物の集積地
 ・ネーデルラントの相続→オランダは独立を宣言
  →商人はアムステルダムへ移動

(3)オランダ東インド会社(VOC)
 ・設立[1602],6都市からの資本集積(英の12倍)
   ・アムステルダム:資金の57%を分担
   ・政府から要塞建設・総督任命・兵士雇用権を授与
 ・アジアへの進出:香辛料貿易
   ・バタヴィア(ジャカルタ)建設[1619]
   ・アンボイナ事件[1623]→アジア域内から英を駆逐
   ・マラッカ征服[1641]
 ・出資:有限責任制,10年据え置き,配当金20%程度
 ・経営:十七人会…重役会議
      インド評議会(バタヴィア)…貿易,行政,法務
  ⇒既存のアジア域内貿易パターンのうえに成立
【参考文献】
フィリップ・カーティン(田村愛理・中堂幸政・山影進訳)『異文化間交易の世界史』NTT出版,2002年。
杉山伸也『グローバル経済史入門』岩波書店,2014年。
羽田正『東インド会社とアジアの海』(興亡の世界史15)講談社,2007年。
浜下武志『近代中国の国際的契機』東京大学出版会,1990年。
ジャン=ルイ・フランドラン,マッシモ・モンタナーリ編(宮原信,北代美和子監訳)『食の歴史』Ⅱ,藤原書店,2006年。