九州大学経済学部 経済史I
10月19日 L04 明清帝国と東アジアの国際環境
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1.明朝の対外・経済政策

(1)中国における江南開発史
 ・宋:農業・経済の中心→稲作,棉花,陶磁器
 ・元:商業・金融→都市の発展
 ・明建国と江南地方
   ・洪武帝[在1368-98]の基盤→税収源
   ・永楽帝[在1402-24]と北京遷都

(2)華夷秩序と朝貢貿易システム
 ・ 華夷秩序:中国の伝統的な国際秩序観
   ・朝貢:諸国→中国皇帝,貢物を献上
   ・冊封:皇帝→諸国の君長,国王に任命
 ・海禁:民間の対外貿易を禁止→朝貢貿易
 ・鄭和の大遠征[1405-33]→沿岸王国に朝貢勧誘

2.明末清初の東アジア海域

(1) 「北虜南倭」と銀問題
 ・北方政策と銀不足→一条鞭法(軍糧の銀納化)
 ・倭寇:漢人+博多商人+ポルトガル人
  ・日本銀⇔中国産生糸
   ・寧波の乱[1523]→海禁強化→密貿易化
 ・銀流入の増加
  ・スペイン,マニラ建設[1571]→メキシコ銀の流入
  ・豊臣秀吉の朝鮮出兵→財政悪化

―ハーフタイム―

(2) 「華夷変態」
 ・女真(満洲),特産品ルートの掌握(人参,虎皮)
  →清に改称[1636]:満・蒙・漢の共同君主
 ・明の滅亡[1644]→鄭芝龍・成功の抗清運動
  →降伏,海禁解除[1683-84]

3.清朝の対外・経済政策

(1)康煕~乾隆時代
 ・康煕年間の国際環境[1661-1722]
   ・対日貿易:寧波-長崎,北京-朝鮮-対馬
   ・南洋貿易:廈門-東南アジア,香辛料
 ・雍正~乾隆年間の国際環境[1722-95]
   ・藩部の成立:チベット,新疆

(2)カントン・システムと対ヨーロッパ貿易
 ・ヨーロッパ船の来航:広州のみ開港[1757]
   ・幹線貿易:ヨーロッパ-中国,銀⇔茶
   ・Country Trade:ヨーロッパ船のアジア域内貿易
 ・乾隆年間:売り手市場,好景気
  →地価高騰,物価高騰→銀の蓄積
【参考文献】
上田信『海と帝国』(中国の歴史09)講談社,2005年。
岸本美緒『清代中国の物価と経済活動』研文出版,1997年。
岸本美緒『東アジアの「近世」』(世界史リブレット13)山川出版社,1998年。
岸本美緒・宮嶋博史『明清と李朝の時代』(世界の歴史12)中央公論社,1998年。
佐伯弘次「博多と寧波」,荒野泰典・石井正敏ほか編『通交・通商圏の拡大』(日本の対外関係3)吉川弘文館,2010年,所収。
武野要子編『カラー版福岡 アジアに開かれた交易のまちガイド』(岩波ジュニア新書552)岩波書店,2007年。
中島楽章「14-16世紀,東アジア貿易秩序の変容と再編 ―朝貢体制から1570年システムへ―」,『社会経済史学』第76巻第4号(2011年2月)。
浜下武志『近代中国の国際的契機』東京大学出版会,1990年。