九州大学経済学部 経済史I
12月07日 |
L09 |
近代日本における会社制度の発達 ―成立期と企業勃興期― |
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出席カードの課題 |
・今回の授業内容や形式に対する疑問・質問点,または感想・批評を書きなさい。
・明治初期~前期における日本の会社制度の特徴と限界を述べなさい。(どちらか1つで可) |
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1.日本における会社制度の成立
(1)幕末の海外渡航経験者による会社制度の普及
・福沢諭吉:1860年・1867年に渡米,1862年に渡欧【参考資料1】
→ 『西洋事情』(1866-70年)【史料1】
・渋沢栄一:1867-68年に渡仏【参考資料2】→『立会略則』(1871年)【史料2】
・「商社,会社」(company)=複数資本の結びつき
(2)明治初期の株式会社:国立銀行制度
・明治維新[1868]→新政府の課題のひとつ:金融政策
・国立銀行条例[1872]【参考資料3】
・資本金の40%を兌換準備⇔設立:わずか4行
・国立銀行条例改正[1876]【参考資料4】
・資本金に,秩禄処分に伴う公債(金禄公債)を活用
→計153行が設立(現在の地銀のルーツ)【参考資料5】
―ハーフタイム―
2. 1880年代後半の企業勃興期
(1)松方デフレ[1881-85]【図1】
・農民の階層分解→地主の資本蓄積→企業投資へ
(2)企業設立ブーム[1886-90]
・近代移植産業→株式会社制度を採用
∵一定規模の資本,未知の分野ゆえの高リスク
・会社総数と払込資本金の大幅な増加【表1】
・鉄道業:日本鉄道設立[1881]→九州鉄道[1888]設立【図2,表2】
・綿紡績業:大阪紡績会社[1882]【参考資料6,7,図3】→綿糸の輸入代替化
(3)企業勃興期における株式会社の限界
・ 「統一的な会社法」に依拠しない→旧商法施行[1893]
・大株主が専門的知識を持たず,業績にのみ関心
→減価償却や内部留保を犠牲にした高配当 |
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【参考文献】 |
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岡本幸雄「博多絹綿紡績株式会社の成立と展開過程」,迎由利男・永江眞夫編『近代福岡博多の企業者活動』九州大学出版会,2007年,所収。 |
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渋沢栄一『立会略則』大蔵省,1871年(国立国会図書館デジタルコレクション http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994928)。 |
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玉置紀夫『日本金融史』有斐閣,1994年。 |
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東洋紡Webサイト「TOYOBO STORY 東洋紡,130年の軌跡」(http://www.toyobo.co.jp/company/story/) |
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中村尚史『日本鉄道業の形成』日本経済評論社,1998年。 |
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福澤諭吉(マリオン・ソシエ,西川俊作編)『西洋事情』(福澤諭吉著作集第1巻)慶應義塾大学出版会,2002年。 |
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宮本又郎「産業化と会社制度の発展」,西川俊作・阿部武司編『産業化の時代』上(日本経済史4),岩波書店,1990年,所収。 |
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宮本又郎・阿部武司「明治の資産家と会社制度」,宮本又郎・阿部武司編『経営革新と工業化』(日本経営史2),岩波書店,1995年,所収。 |
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