九州大学経済学部 経済史I
12月21日 L11 近代三菱の企業経営史 ―岩崎彌太郎・彌之助・久彌の時代―
出席カードの課題
・今回の授業内容や形式に対する疑問・質問点,または感想・批評を書きなさい。
・初代社長・彌太郎から3代社長・久彌に至る三菱の経営構造の変遷をまとめなさい。(どちらか1つで可)
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1.岩崎彌太郎と近代日本海運業の黎明
(1)岩崎彌太郎[1835-1885]と三菱の誕生
 ・ 開港後,沿岸航路は外資独占【図1】→国際収支の悪化
  →大久保利通による国内海運事業の保護政策
 ・彌太郎,土佐藩の海運業を継承【参考資料1,2-1】→「三菱」誕生[1870]

(2)三菱の海運業と政府の保護・育成
 ・台湾出兵[1874]の輸送貢献→上海航路へ進出[1875]【図2】
 ・第一命令書[1875]:助成金交付,汽船の無償払下げ
 ・荘田平五郎,複式簿記を採用:船・財産毎のP/L, B/S
  ←福澤諭吉「帳合之法」 [1873](会計制度の紹介本)【史料1,図3,参考資料2-2~3】
 ・荷為替金融の開始:三菱為替店(倉庫・金融業)
  →沿岸航路・上海航路から外資を排除【参考資料4~5】
 ・三井による共同運輸の設立[1883]【図4】←米輸送の費用増
  →松方デフレ+運賃競争→合併:日本郵船[1885]

―ハーフタイム―

2.経営の多角化と事業部制への展開
(1)岩崎彌之助[1851-1908]と「海から陸へ」の転換
 ・海運業分離後,三菱社設立(炭鉱業・鉱山業)[1886]【参考資料6】
 ・官有物の払下げ→造船業・不動産業へ本格的進出
   ・長崎造船所[1887],丸の内[1889]【図5】
 ・高学歴の専門経営者を積極的雇用【参考資料7-1~2】
  →奉公人の子飼雇用からOJTのアウト・ソーシングへ

(2)岩崎久彌[1865-1955]と事業部制の導入
 ・旧商法の施行[1893]→実業会社の法人組織を規定
  →三菱合資会社の設立[1893]【参考資料8~9】
 ・明治後期資本家の資産運用パターン
   ・郵船株売却→鉄道株購入・売却→電力株購入
 ・事業部制と独立採算制度の導入[1908-11]
  →各部門に人事・規則・投資の権限と責任を持たせる
  ⇔各事業部から利益金の一部を本社に上納【参考資料10~11】
【参考URL】
三菱ホームページ委員会Webサイト「三菱の歴史」
東京海上日動火災保険株式会社Webサイト「東京海上日動の歴史」
【参考文献】
岩崎彌太郎・岩崎弥之助伝記編纂会『岩崎彌太郎伝』上・下,岩崎彌太郎・岩崎弥之助伝記編纂会,1967年。
岩崎彌太郎・岩崎弥之助伝記編纂会『岩崎彌之助伝』上・下,岩崎彌太郎・岩崎弥之助伝記編纂会,1971年。
岩崎久彌伝編纂委員会『岩崎久彌伝』岩崎久彌伝編集委員会,1961年。
小風秀雅『帝国主義下の日本海運』山川出版社,1995年。
小林正彬『岩崎彌太郎』吉川弘文館,2011年。
武田晴人「事業部制採用と独立採算制度」,『三菱史料館論集』第5号(2004年2月)。
武田晴人『岩崎弥太郎』ミネルヴァ書房,2011年。
福澤諭吉(小室正紀編)『民間経済録 実業論』(福澤諭吉著作集6)慶應義塾大学出版会,2003年。
宮本又郎・阿部武司「概説1880年代-1915年」,宮本又郎・阿部武司編『経営革新と工業化』(日本経営史2)岩波書店,1995年。
宮本又郎・阿部武司・宇田川勝・沢井実・橘川武郎『日本経営史』新版,有斐閣,2007年。
鷲崎俊太郎「三菱における東京の土地投資と不動産経営:1870~1905年」,『三菱史料館論集』第10号(2009年3月)。