九州大学全学共通科目 「文系コア」経済学(木1)
5月16日 L04 幕末「開港」と近代日本
1.交通・通信革命と「開国」

(1)イギリスにとっての東アジア市場
 ・中国の開港→茶貿易:英の入超
 ・Country Traderの進出:ジャーディン・マセソン商会
 ・ヨーロッパ-アジア間航路の形成: P&O汽船

(2)アメリカにとっての東アジア市場
 ・フロンティアの拡大→北太平洋捕鯨業の発展
   ・漂流民保護,薪炭・食料補給→寄港地の必要性
 ・対中貿易の増加→太平洋横断航路の計画
 ・日米和親条約→「開国」:国交の締結

(3)福澤諭吉『民情一新』
 ・西洋諸国の文明開化:交通の便と「智」
  →福澤の「開国」:外国で発明された利器の導入

2.「開港」と開放経済への転換

(1)「開港」と居留地貿易
 ・日米修好通商条約 [1858]:通商関係の締結
 ・内地通商権の否認=非関税障壁
  →開港場で外商と内商が取引
   ・情報の非対称性,内商不正のリスク→現金決済
 ・生糸輸出と綿製品輸入:寡占市場化
  →長期相対取引,取扱品目の専門化

(2)「開港」の経済史的意義
 ・「不平等」条約←幕府の国際感覚を評価
 ・経済システムの転換:閉鎖経済→開放経済
 ・国際秩序への編入:条約による国交関係
 ・アジアへの「開港」→朝貢貿易システムの継続

―ハーフタイム―

3.近代日本における経済成長の再検討

(1)明治政府の成立と課題
 ・国際収支・財政収支の均衡⇔国内経済の成長
   ・当初の資産:幕府所有の領地・鉱山・近代工場
 ・廃藩置県,地租改正→増税を見込めず
 ・「殖産興業」:鉄道・炭鉱の利権回収,インフラ投資
  →明治政府の役割:近代化のオーガナイザー

(2)2つの工業化パターン
 ・資本集約型:西洋(アメリカ)の「産業革命」
   ・エネルギー多用の技術発展→一人当り所得上昇
 ・労働集約型:東アジア(日本)の「勤勉革命」
   ・独自の労働観・経営観→人口増加による市場拡大
 ・日本の工業化=西洋技術の移植+在来技術の改良
【参考文献】
石井寛治『近代日本とイギリス資本――ジャーディン=マセソン商会を中心に』東京大学出版会,1984年。
梅村又次・山本有造編『開港と維新』(日本経済史3)岩波書店,1989年。
西川俊作・阿部武司編『産業化の時代』上(日本経済史4)岩波書店,1990年。
西川俊作・阿部武司編『産業化の時代』下(日本経済史5)岩波書店,1990年。
杉山伸也・リンダ=グローブ「近代アジアの流通ネットワーク」,同編『近代アジアの流通ネットワーク』創文社,1999年,所収。
杉山伸也・ジャネット=ハンター「日英経済関係史」,同編『日英交流史1600-2000』4経済,2001年,所収。
福沢諭吉(小室正紀編)「民情一新」,『福沢諭吉著作集』第6巻,慶應義塾大学出版会,2003年。
鷲崎俊太郎「明治初期の横浜居留地市場と内外商間取引」『三田学会雑誌』第99巻第4号(2007年3月)。
杉原薫「比較史のなかの日本の工業化」,石井寛治・原朗・武田晴人編『日本経済史研究入門』(日本経済史6)東京大学出版会,2010年,所収。
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