佐賀大学経済学部 日本経済史II
11月05日 L05 幕末開港と開放経済への転換
1.「地方の時代」の到来

(1)商人組織のシフト:都市から農村へ

  在郷商人の成長/農村内商品生産の発展/地主・富農の商人化/都市商人への対抗

  /流通自由化の要求/国訴/新興輸送業者による地域間取引/海上:北前船・内海船/陸上:中馬

  /大坂入津量の激減/幕府による流通統制の困難化

(2)市場構造のシフト:中央から地方へ

  江戸地廻り経済圏/低賃金労働力と輸送費削減/絹織物:桐生・八王子・秩父/綿織物:真岡・村山

  /醤油:野田・銚子/大坂市場からの自立

2.交通・通信革命と「開国」

(1)イギリスの自由貿易の方向性

  イギリスの工業化/輸出入市場としてのアジア/ヨーロッパ-アジア間定期航路の形成/P&O汽船

  /イギリスの対中生糸・茶貿易/EIC商業活動の全面停止/中国の開港/英の入超傾向とアヘン輸出

  /Country Traderの香港・上海進出/ジャーディン・マセソン商会

(2)アメリカの対日外交目的

  対中貿易のための太平洋横断蒸気船航路計画/捕鯨船の漂流民保護と薪炭・食料補給

  /寄港地・避泊港の必要性/日米和親条約/国交の締結

  ※「日米和親条約写」は,国立国会図書館「史料にみる日本の近代」で閲覧できます。
   

―ハーフタイム―

3. 「開港」と開放経済への転換

(1)「開港」と居留地貿易制度

  日米修好通商条約/領事裁判権の承認⇔判決:欧米有利でもない/協定関税→従価5%の輸出入税

  /居留地貿易:横浜長崎/内地通商権の否認=非関税障壁/「代理店制度」とパートナーからの指示

  /情報の非対称性/内商不正のリスク/現金決済/居留地貿易の構造/生糸輸出/売込商と売手市場

  /綿製品・砂糖輸入/引取商と買手市場/寡占と長期相対取引/取扱品目の専門化

(2)金銀比価問題と「価格革命」

  金銀比価の相違/日本=1:5⇔欧米=1:15/「金貨流出」/万延の貨幣改鋳

  /ハイパー・インフレーション/「価格革命」/国内価格と国際価格とのリンク

(3)「開港」の経済史的意義

  「不平等」条約の締結/幕府の国際感覚への再評価/経済システムの転換/閉鎖経済から開放経済へ

  /欧米による国際秩序への編入/条約による国交関係/アジアへの「開港」/朝貢貿易システムの継続
【参考文献】
石井寛治『近代日本とイギリス資本――ジャーディン=マセソン商会を中心に』東京大学出版会,1984年。
杉山伸也「国際環境と外国貿易」,梅村又次・山本有造編『開港と維新』(日本経済史3)岩波書店,1989年,所収。
三上隆三『江戸幕府・破産への道』日本放送出版教会,1991年。
杉山伸也・リンダ=グローブ「近代アジアの流通ネットワーク」,同編『近代アジアの流通ネットワーク』創文社,1999年,所収。
杉山伸也・ジャネット=ハンター「日英経済関係史」,同編『日英交流史1600-2000』4経済,2001年,所収。
斎藤善之「近世的物流構造の解体」,歴史学研究会・日本史研究会編『近世の解体』(日本史講座7)東京大学出版会,2005年,所収。
鷲崎俊太郎「明治初期の横浜居留地市場と内外商間取引」『三田学会雑誌』第99巻第4号(2007年3月)。
杉山伸也「外国商人の活動」,阿部武司・中村尚史編『産業革命と企業経営―1882~1914―』(講座・日本経営史2),ミネルヴァ書房,2010年,所収。
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