佐賀大学経済学部 日本経済史II
12月03日 L08 「大隈財政」と「松方財政」
1.「大隈財政」と地方経済の発展

(1)西南インフレの発生

  豊作による米価下落→地租減額→政府収入の減少/西南戦争の征討費→不換紙幣の増発

  /通貨供給量の膨張→米価・農産物価格の上昇→「銀紙格差」の拡大

(2)大隈重信の経済政策

  「銀紙格差」に対する当初の認識/原因:輸入超過→銀貨不足→銀価騰貴/積極財政:起業公債の発行

  /原因の再検討:紙幣の増発→価値下落→紙幣整理の必要/緊縮財政:酒造税引上げ/工場払下概則

(3)地方経済の発展と農村市場の拡大

  地租減額+米価上昇+生糸輸出/農村における可処分所得の上昇/公債の購入/国立銀行の設立

  /輸入綿糸の使用→在来綿織物業の発展/被服費の拡大/古着から輸入綿布へ

(4)明治14年の政変 [1881]

  大久保利通の暗殺→大隈重信と伊藤博文の対立/北海道開拓使官有物払下げ事件→大隈追放

  /三菱の海運業独占に対する批判/三井による共同運輸会社の設立→三菱との競争

  /日本郵船の設立/三菱の鉱山業・造船業への進出→多角化と財閥化の転機

―ハーフタイム―

2.「松方財政」とデフレーション

(1)紙幣整理と均衡財政政策

  松方正義の大蔵卿就任/紙幣整理と正貨兌換制度への課題/財政規模の拡大/歳入:間接税の新設

  /歳出:壬午・甲申事変→軍事費の増加と抑制/土木費の地方財政への転嫁/官業払下げ

(2)金融政策

  海外荷為替取組制度/輸出奨励と正貨蓄積/横浜正金銀行/生産設備拡大のための増資

(3)通貨政策

  日本銀行の設立/発券銀行の統一化→通貨供給量の一元管理/国立銀行の普通銀行化

  /銀本位制の確立→兌換銀行券の発行⇒「紙幣整理」と「銀紙解消」の達成

(4)「松方財政」の影響

  国内経済:農村部への打撃/自作農の農地売却/小作農に転化/都市への流入→賃金労働者化

  /土地取得→地主の資本形成/国際環境:輸入外商への打撃/輸入外商の日本市場からの撤退

  /輸入抑制効果/国内市場・産業の保護・育成
【参考文献】
坂野潤治「明治国家の成立」,梅村又次・山本有造編『開港と維新』(日本経済史3)岩波書店,1989年,所収。
斎藤修・谷本雅之「在来産業の再編成」,同上,所収。
山本有造「明治維新期の財政と通貨」,同上,所収。
玉置紀夫『日本金融史』有斐閣,1994年,第3章。
杉山伸也「外国商人の活動」,阿部武司・中村尚史編『産業革命と企業経営―1882~1914―』(講座・日本経営史2)ミネルヴァ書房,2010年,所収。
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