2010年度 九州大学経済学部 「日本経済史」 レポート
採点結果成績優秀者講評

採点結果
  履修者数 提出者数 平均値
Average
中央値
Median
最頻値
Mode
標準偏差
Standard
Deviation
変動係数
Coefficient
of
Variation
140 11 46.4 45 50 3.9 0.08
50点満点。
「変動係数」は,標準偏差を平均値で除した値のこと。これにより,平均値の大小に関わらず,「散らばりの度合」を比較できる。

成績優秀者
以下のみなさんは,50点満点を獲得した方たちです。
非常に優秀な成績だったので,とくに努力を賞したいと思います。大変よくがんばりました。
1EC07035E 1EC07109K 1EC07253G 1EC08013R 1EC08101G
(以上5名)
以下のみなさんは,45点以上獲得した方たちです。
成績優秀につき,努力を賞したいと思います。よくがんばりました。
1EC07139Y 1EC08179G 1EC08185S 1NC08008M (以上4名)

レポート 講評
レポートを提出したみなさん,お疲れさまでした。全体として個性溢れる良質なレポートに恵まれ,とても楽しく採点することができました。
全般的に,4年生経工生・21プロ生の検討が光りました。また,中間試験を受験し,かつレポートにも果敢に挑戦してくれた方もいらっしゃいました。うれしい限りです。どのレポートにも,時間と金銭という2つのコストをかけた分,「絶対単位を取得してみせる!」という強い意気込みが感じられました。
最も多かった訪問先は,福岡市博物館で,11人中5人が同所を見学していました。しかし,これに飽きたらず,1人で2か所以上の博物館を訪問してきたり,東京の逓信総合博物館,大阪の大阪歴史博物館まで足を運んでくれた方もいました。なかには,一般公開されていない場所に入室できた方もいたそうで,レポートの文面からワクワクした期待感や躍動感が伝わってきました。
島根県津和野町の民俗資料館や,佐賀市にある佐野常民記念館を採り上げてくれた方もいました。どちらも,まだ私は行ったことがありません。レポートを通じて,実りある情報を提供してくれたので,私にも有益となりました。
「授業内容と照らし合わせながら,日本経済史ゆかりの場所を訪れる」という点で,北部九州はきわめて良い立地条件にあります。九州鉄道記念館へのフィールドワークを題材に,企業勃興に興味を持って執筆してくれた方もいました。他方,「徳川時代の藩専売制」という講義内容をもとに,九州国立博物館の特別展と伊万里焼の窯元を訪れ,佐賀藩の陶磁器生産と国内・国外流通を分析したレポート,さらに,「日清戦後経営」の講義内容をもとに,田川市石炭・歴史博物館と旧伊藤伝右衛門邸を訪ねて,このころにおける筑豊炭田の発展過程を研究したレポートは,卒論の一部として利用できるほどの完成度を誇っていました。
なかには,偶然ご自宅にあった一次資料(具体的には,明治期のある教育者が世界中から日本に向けた絵はがきのコレクション)をもとに,その教育者がどんな海運会社の定期航路を使って洋行していたのか,軌跡を追うとともに,明治期の海運業・郵便事業をサーベイしたレポートもありました。世界に一つだけの資料を使って描かれているだけに,オリジナリティーを余すところなく発揮した一例として,高く評価できます。
所属ゼミの研究課題と絡めたレポートも見受けられました。経済理論や経営学のエッセンスを,時系列的に展開できていた点で,大変興味深い内容だといえます。
あえて,得点に差ができたとすれば,その要因はふたつあります。ポイントのひとつは,「授業内容との関係性」で,経済史というよりは,やや政治史や近世史に特化してしまったレポートが数点ありました。そのため,結論として,何がわかったのか,何を発見できたのか,断定しきれていませんでした。
いまひとつのポイントは,「脚注・レファレンスの書き方」です。とくに,参考文献を文末に一覧で列挙しても,結局,そのどこからどこまでを引用してきたのか,はっきりしていないレポートが顕著に見られました。「引用」と聞くと,「パクっている」というイメージをお持ちかもしれませんが,そうではありません。自分の意見を正当化させる客観的な判断材料が,参考文献であり,引用注なのです。むろん,度を越してはいけません。そういうのは,「引用」ではなく,「盗作」,つまり「パクリ」となります。なにより,「レポートで決してしてはならないのは,他人の意見を自分の意見のような顔をして書く,あるいは他人の意見とも自分の意見とも取れるような形で書くこと」です。他人の意見は,引用しても良いのですが,「誰の意見であるか,どこから取ったものであるかを明記した上で,その人の真意をそこなわないように気をつけて引用しなければな」りません。(以上,括弧内は,木下是雄『レポートの組み立て方』ちくま学芸文庫,2005年,159頁から引用。)
とはいうものの,いずれも力作だったと思います。みなさんの努力が,得点に結びついていれば幸いです。
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